失業・半失業の常態化と生活保護−稼働能力活用要件に関する検討を中心に
The Engraved (Semi)Unemployment and the Livelihood Protection Program: A Review on Application Requirements for Work Capacity
다나카 아키히코(龍谷大学)
13권 4호, 1495~1527쪽
초록
男性片働き正社員をモデルとする日本型雇用が崩壊し、短期雇用と雇用喪失を反復し、不安定就労・低賃金などで自らの賃金だけでは自身の労働力の再生産が不可能な 「半失業」状態の非正規労働者や失業者が増大し、また常態化している.雇用保険は、適用要件・受給要件・基本手当の給付日数の点で十分に機能しておらず、最後のセーフティネットとしての生活保護が果たすべき役割が増大している.失業、その他の働きによる収入の減少、事業不振・倒産を理由とする保護受給者の増加を反映して、「その他の世帯」を中心に保護受給者は増えているものの、生活保護の捕捉率(研究者による推計で20%前後、2007年の国民生活基礎調査にもとづく国の推計では32.1%)はきわめて低く、また、「その他の世帯」は50歳以上の高年齢者が53.5%を占め、20歳代の若年者はわずか5.2%に過ぎない(2010年).このように若年者が十分に生活保護を受けられていないのである. 稼働能力を有する失業者・半失業者の保護受給を阻害するのが、生活保護法4条1項に規定する能力の活用=稼働能力活用要件である. 2013年8月1日から生活扶助基準が大幅に引下げられ(3年間で最大10%、削減額は2013年度で150億円、3年かけて6.5%減の670億円)、半失業状態の非正規労働者・失業者が一層、生活保護から排除される状態である.また、183回通常国会に提出され、廃案になった生活困窮者自立支援法案は、新たな 「水際作戦」となり得る生活困窮者自立相談支援事業を規定しており、同法案は185回臨時国会で再提出されている.183回通常国会に提出され、廃案になった生活保護法案は、保護申請における申請書提出(扶養義務者の扶養状況を含む)を義務化し、扶養義務者の通知を創設するなど、「水際作戦」を合法化する内容になっており、185回臨時国会に再提出されている.8月から実施された保護基準引下げに伴って、特別控除が廃止され、また、勤労控除の見直しに伴って保護の要否判定の取扱いが変更(要否判定において基礎控除の引上げ分は要否判定に用いず、2012年度基準の基礎控除額の70%の金額を適用)されたことにより、保護が廃止される事態が生じている.合理的理由のない大幅な保護基準引下げは憲法25条1項の生存権の自由権側面もしくは同条2項の社会保障の向上・増進義務に違反するというべきものである.まさに、生活保護の入り口を狭めて適用を抑制し、また受給中の者を生活保護から排除する内容となっている. 本報告は、要保障事故としての失業・半失業に対して生活保護はどう対応すべきか、という問題意識のもと、生活保護受給を阻害している保護開始要件としての稼働能力活用要件と保護継続要件としての稼働能力活用要件に関する問題を中心に、半失業状態の非正規労働者や失業者に対して機能するための課題を提示することを目的とするものである. なお、保護適用を阻害している自動車の保有や預貯金等の資産活用要件に関する問題および扶養義務者による扶養優先問題は、本報告では取り上げない. 稼働能力活用要件については、「稼働能力あり」との医師の判断、就労先確保の可能性を理由に、稼働能力不活用との判断がなされ、申請が却下されるという運用実態がある.1997年の林訴訟名古屋高裁判決の判断を受けて、2008年度の 「保護の実施要領」改正により、稼働能力活用要件の判断基準が盛り込まれた.①稼働能力があるか否か、②その具体的な稼働能力を前提として、その能力を活用する意思があるか否か、③実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かである.裁判例では、稼働能力活用の意思について、「真正な意思」で足りるとする判断や、稼働能力を活用する場については、生活困窮者の意思のみにもとづいて得られるものに限られるという判断が出されている. 稼働能力活用要件は、資本主義社会の自己責任の原則を実現するために設けられたのであるが、稼働能力活用要件を解釈する際は、①憲法25条・14条・13条の基本的人権の枠組みを踏まえ、②補足性の原理の上位規範である生活保護法1条から3条の憲法的原理に反しないように、③憲法13条・22条・27条を具体化した適職選択権を阻害しないように、④生活保護は社会保障制度の最後のセーフティネットであることを考慮し、⑤現行生活保護法は膨大な失業者に対応するために制定された歴史的経緯を踏まえなければならないと考える. 裁判例・行政通達からは、少なくとも、医師の 「稼働能力あり」との診断結果のみで稼働能力があると判断して申請を受理しない、申請を却下する、保護受給中の場合は保護を停廃止するのは、違法と判断される.稼働能力を有する失業者・半失業者にとって、稼働能力活用の意思と活用の場がとりわけ問題となる.行政通達が指摘する 「真摯に求職活動」を行うことは不要である.稼働能力の活用の場については、申請者の意思のみで就労可能な場であり、その場で得られる収入が最低生活費を上回らなければならず、さらに稼働収入が直ちに支払われるものでなければならない.保護受給中の場合、就職先が見つかったことや就労したことのみを理由に保護を廃止してはならない.稼働収入により恒常的に最低生活費を上回る場合にのみ保護を廃止し得るに過ぎないのである. 以上、検討したことから、生活困窮状態にある場合には、保護申請を認めることが原則であり、そうした場合にもかかわらず、稼働能力不活用を理由として保護申請が却下される場合については、きわめて限定的に解すべきである.保護受給中は、現実の就労により最低生活が確保されない限り、保護の必要性を認めることが、最後の最低生活保障としての生活保護の役割から要請される.また、保護受給中の指導指示違反を理由とする制裁的保護の変更ないし停廃止は、当該決定によって当該被保護者が最低生活費を下回る生活を強いられることになるから、きわめて慎重に行わなければならない.稼働能力活用要件は、保護を開始する場合の積極的な要件(活用しなければ生活保護は受けられない)ではなく、保護受給後の消極的要件(活用しなければ生活保護を受給できなくなる)と解釈すべきである. この解釈を定着させるためには、生活保護法を改正して、保護継続要件としての稼働能力活用要件の判断基準を明記すべである.就労の場がないと稼働する意思自体を喪失することが多々あるので、稼働能力を活用する意思は判断基準に盛り込むべきではないと考える. しかしながら、稼働能力不活用による保護の停廃止の問題が残る.受給中の保護の停廃止は最低生活保障なき制裁的処分であり、生存権保障義務の放棄である.憲法25条2項の社会保障の向上・増進義務の観点から、稼働能力活用要件を削除することが求められる.失業・半失業に対する生活保護法の稼働能力活用要件の課題以外に、要保障事故としての半失業に対する生活保護の対応で求められることは、生業扶助の活用(高等学校等就学費を含む技能習得費)によるスキルアップや就労支援による最低生活費を上回る安定した、なおかつ今後の職業能力を蓄積発展させていくための就労先の確保である.抜本的には、生業扶助を再編し、就労保障扶助を創設する必要がある.ソーシャルワーク・就労保障機能向上のために、社会福祉法の一部改正が必要である.現業員(ケースワーカー)の配置基準を現在の標準数から最低基準とし、現在よりも増員(65世帯に1人)をし、就労保障の援助をし得る専門性の高い有資格者とすべきである.その場合の有資格者として社会福祉士が考えられる.
Abstract
The jobless and the temporary workers(semi-unemployed), who are incapable of reproducing self-manpower only with their wages, are increasing because of the collapse of Japanese-style employment system, the repetition of short-term employment and unemployment, the unstable employment, and the low wages. In addition, this situation is getting fixed. Unemployment insurance does not function well with respect to application requisite, reception qualification, and the number of paydays of basic allowance. Therefore, the role of the livelihood protection program becomes critical as a last resort. However, the current law accepts only the elderly as a main recipient of livelihood protection; it is not enough covering the young with unemployment even if the number of total recipients is increased. The main reason is the law’s requirements of labor capacity. The unemployed or semi-unemployed young with labor capacity cannot satisfy them because the government lowered the recipient standard drastically through Aug. 2013 regulation. The writer, in this article, argues that this sharply narrowed requirement standard violates the Japanese Constitution Article 25, Section 1 and 2, which stipulates the right to life as liberty and the state’s duty to enhance the livelihood protection programs. This article claims that the Livelihood Protection Act should be revised to cover the unemployed or semi-unemployed young as a recipient of the livelihood protection payment by opening the work capacity requirements for application.
- 발행기관:
- 한국법정책학회
- 분류:
- 법학