日本法におけるキャッシュアウトの 公正な対価の認定手法 ――最高裁平成28年7月1日決定の紹介 1
“Fair Price” in Cash-out in Japan - Supreme Court, Order, July 1, 2016
得津晶(東北大學 法學硏究科)
7권 1호, 165~185쪽
초록
2005年(平成17年)会社法は、全部取得条項付種類株式制度の導入および現金対価合併(組織再編の対価柔軟化)を認め、これにより、日本法において少数派株主の締出し(キャッシュアウト〔米国法ではfreeze-outと呼ばれる〕)が認められるようになった。少数派株主の保護のための手段として、2005年会社法改正の用意した制度は、反対株主の株式買取請求権およびキャッシュアウトの対価を裁判所で争う方法であった。これは、裁判所で認定した金額分の金銭的な補償をすることで少数派株主保護を図るものである。だが、裁判所は、いったいどのようにして株主に補償すべき金額を決定すればよいのか。この問題について、2005年当初は全くの手がかりがない状況であった。しかし、会社法施行から10年が経過し、キャッシュアウトについて、裁判所の判断が蓄積された。 日本法の下でのキャッシュアウトの具体的な手法には、①現金対価組織再編(交付金合併など)、②全部取得条項付種類株式、③株式の併合、そして2014年会社法改正で導入した④特別支配株主の株式等売渡請求制度の4つがある。そのいずれの手続においても、締め出される際の対価を裁判所で争う方法を認めることで、少数派株主保護を図っている。となると、裁判所が締出し価格をどのように認定するのかが、少数派株主の保護にとって非常に重要となる。この問題について判断を示したのがレックスホールディングス事件とジェイコム事件という2つの最高裁の決定である。 レックスHD事件は、二段階買収の事案であるところ、第一段階の公開買付手続において強圧性が除去されていないなどの問題のある事件であった。そこで、最高裁の補足意見は、キャッシュアウトの締め出しの公正な対価を、MBOが行われなかったならば株主が享受し得る価値と、MBOの実施によって増大した価値のうち株主が享受してしかるべき部分の合計であると定式化した。だが、この2つの要素をどのように認定すればよいのかについては全く述べられていない。 そこで、実務的には、どのような手続を踏めば、公開買付価格を公正な価格と認定してもらえるかが課題となった。これに対して回答を与えたのが、2016年7月のジェイコム事件であった。最高裁は、①「独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置」と、②「公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続」とを満たし、公開買付が成立すれば、この公開買付価格をもって、公正な対価とすることを認めた。 この基準は、米国法のMBOにおける取締役の信認義務の判断基準と非常に似ている。その意味で、コンバージェンスと評価できる。他方で、第三者委員会について、社外取締役による必要がなく、また、どの程度、詳細な審査が要求されるか不透明であるなど、米国法の実質とは乖離する可能性も指摘されている。
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